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【コラム】快慶作・弥勒菩薩立像 / ツバキング

Mirokubosatsu

快慶の仏像の特徴といえば、細身の体型や絵画的に表現された衣文にありますが、同作ではその特徴があまり見られません。

それはこの作品が、快慶が彼のスタイルを確立するより前、現存する快慶作品の中で最も古いものだからです。

それでも、切れ上がった目や小さめの口が織りなす表情はクールで知的な印象を与え美しく、彼の技量がすでに高いものであったことを伺わせます。

さらに、条帛(じょうはく)と言われる両脇に垂れた布の表現は、木を彫り出したと思えないほど柔らかくリズミカルで、後の快慶が生み出す数々の作品に見られる誇張した衣文の表現の萌芽を感じさせます。

近づいて顔を見つめてみると、今にも動き出しそうな生命感。

それは玉眼によるものです。

玉眼とは、仏像の目の内側をくり抜き内側に瞳を描いた水晶をはめ込んだもので鎌倉時代に流行した、日本の仏像特有の技法です。

これによって、まるで人間の目のような輝きが与えられその生命感を支えています。

そんな作品がなぜボストン美術館に所蔵されているのでしょうか。

明治時代、文明開化により日本の文化が後進的であるという思想を持つ者もいました。そうした中で、仏像や仏画の多くは雑な状態で保管され壊れたり消失していきました。

そんな時代、岡倉天心やフェノロサが日本文化の復興を謳い、著作を通じて外国にもその素晴らしさを伝えます。

そしてボストン美術館の東洋部長になった岡倉天心によって救われ、この弥勒菩薩は同館に所蔵されることになったのです。

こうして現代に残った弥勒菩薩立像は、日本中に点在し国宝や重要文化財に指定されることになる快慶作品の起点として美しい姿を残しています。

【関連イベント】
ボストン美術館の至宝展:2017年10月9日まで

ツバキング
ミュージシャン
仏像コメンテーター
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