ウフィーツィ美術館, ティツィアーノ(ティツィアーノ・ヴェチェルリオ)

「ウルビーノのヴィーナス」 ティツィアーノ・ヴェチェルリオ

ウルビーノのヴィーナス
年代:1538年
製法:油彩、カンヴァス
収蔵美術館:ウフィーツィ美術館

ジョヴァンニ・ベッリーニの工房で修業し、ジョルジョーネから多くを学んだティツィアーノは、ヴェネツィア絵画の黄金時代を築き上げた。『フローラ』は彼がジョルジョーネの影響から脱し、独自の様式を確立しつつあった時期に制作されたものである。

そこにはジョルジョーネの夢見るような詩的な表情とは異なり、現実をしっかりと見据えた女性像が描かれている。

一方、『ウルビーノのヴィーナス』は、すでにティツィアーノの名声が広く行き渡った1530年代に、ウルビーノ公の子息のために制作されたものである。ヴィーナスは貴族の館を思わせる場に全裸で横たわり、極めて世俗的かつ官能的に表されている。

後方で衣装を探している召使いらしき女性が、ヴィーナスの世俗性をより強めている。ティツィアーノの描く妖艶(ようえん)な裸婦は、ルーベンスをはじめ、のちの画家に多大な影響を与えた。

解説:松浦 弘明(多摩美術大学 講師)
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