ドイツ・ルネサンス期に活躍した偉大な画家デューラーの油彩による初めての自画像である。
暗い背景の中から光を浴びた正装姿の画家が神秘的な雰囲気に包まれて浮かび上がっている。右手にはアザミの一種で“男の誠実”という意味の名前の草を持っているところから、一般に未来の妻となる女性のために婚約記念の絵として描かれたと考えられている。
ただ、結婚する相手への贈呈の作品にしては理想化することもなく、飾り気の無い厳しいレアリスムが追求されているだけに驚きを禁じえない。
解説:橋 秀文(神奈川県立近代美術館 主任学芸員)