ヴェトゥイユ在住の頃、モネは人物を描くのをやめていたが、1885年頃、オシュデ姉妹をモデルに屋外の人物画を描いた。しかし70年代の人物画とは異なり、人物を包む光に関心を注ぎ、生活感を削ぎ落として、音楽のような抽象的とも言える光のハーモニーを奏でる。
この一対の『日傘の女』のモデルは、のちに義理の娘となるシュザンヌ・オシュデ。右向きは日差しが上からで、陰もなく風も弱い。左向きは時間が経って影が左に伸び、風が出てスカーフは左方に舞い、ドレスも草も揺れる。空の雲もちぎれて動いている。数年後の連作『積み藁(わら)』と同じとらえ方で、モネの目は科学者のように時間で変化する光と色の移ろいを追っている』(高草)