フィリッポ・リッピ
フィリッポ・リッピ
Fra Filippo Lippi
(1406-1469年)
カルメル会の修道士としてフィレンツェのサンタ・マリーア・デル・カルミネ聖堂に隣接する修道院で若い時代を過ごしたフィリッポ・リッピは、この聖堂内のブランカッチ礼拝堂で、マザッチオが壁画連作を制作していた場に立ち会ったと思われる。
彼の初期作品、『タルクイーニアの聖母』(1437年)やサン・ロレンツォ聖堂の『受胎告知』(1438年頃)では、堂々として堅固な人体描写や線遠近法を駆使した空間表現にマザッチオからの影響が見て取れる。
1440年代に入ると、フィリッポ・リッピはマザッチオの厳格な様式から離れ、優美で装飾性の強いゴシック的な特徴を前面に押し出していった。
『聖母戴冠』(1441-1447年、フィレンツェ、ウフィーツィ美術館)やプラート大聖堂の壁画連作(1452-1464年)にそのような傾向を認めることができる。こうした特徴は弟子のボッティチェルリに継承された。(松浦弘明)