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【コラム】美術の皮膚(17)「やっぱり画家は長寿?」

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才能を惜しまれて夭折した画家の物語は、時にドラマチックに語られるけれど、おめでたい長寿は、ミケランジェロ(89歳)やピカソ(92歳)は知られているとしても、あまり話題にならない。少なくとも僕は、シャガールの絵は知っていても、98歳のご長寿だったとはすっかり失念していた。

Hokusaijigazo
自画像 / image via wikipedia

ちなみにご存じだとは思うけれど、「この1000年で最も重要な功績を残した世界の100人」(1999年LIFE誌)にも選ばれている(日)葛飾北斎は88歳のご長寿だった。生涯3万点を超える作品を残し、200人もの弟子を抱えたと云われているのも納得だ。

たったリストにある299人の画家の、没年から生年を引いた数え年での計算だけれど、90歳以上生きた画家は6人(2%)

98歳
(露)マルク・シャガール(1887~1985)

94歳
(墺)オスカー・ココシュカ(1886~1980)

92歳
(西)パブロ・ピカソ(1881~1973)

91歳
(伊)フランチェスコ・アイエツ(1791~1882)

90歳
(伊)ジョルジオ・デ・キリコ(1888~1978)
(西)ジョアン・ミロ(1893~1983)

80歳以上を加えると52人(17.4%)

89歳
(伊)ミケランジェロ・ブオナローティ(1475~1564)
(伊)ジョヴァンニ・ボルディーニ(1842~1931)
(白)ジェームス・アンソール(1860~1949)
(独)エミール・ノルデ(1867~1956)

88歳
(伊)ティッツィアーノ(1488頃~1576)

87歳
(瑞)ジャン・エティエンヌ・リオタール(1702~1789)
(仏)ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル(1780~1867)
(仏)ジョルジュ・ルオー(1871~1958)

86歳
(伊)ジョヴァンニ・ベリーニ(1430頃~1516)
(仏)クロード・モネ(1840~1926)
(露)イリヤ・レーピン(1844~1930)

85歳
(伊)ヴェンチェンツォ・フォッパ(1430頃~1515)
(仏)フランス・ハルス(1581頃~1666)
(フランドル)ヤーコブ・ヨルダーンス(1593~1678)
(仏)アンリ・マチス(1869~1954)
(伊)カルロ・カルラ(1881~1966)
(独/仏)マックス・エルントス(1891~1976)
(仏)ジャン・デュビュッフェ(1901~1986)
(西)サルバドール・ダリ(1904~1989)

84歳
(伊)バロッチ・フェデリコ(1528頃~1612)
(仏)モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール(1704~1788)
(西)ヨハン・ハインリヒ・フュースリ(1741~1825)

83歳
(伊)ピエトロ・ロンギ(1702~1785)
(伊)ジョヴァンニ・ファットリーニ(1825~1908)
(英)ウィリアム・ホルマン・ハント(1827~1910)
(仏)エドガー・ドガ(1834~1917)
(英)フランシス・ベーコン(1909~1992)

82歳
(仏)クロード・ロラン(1600~1682)
(伊)ジュセッペ・マリア・クレスピ(1665~1747)
(伊)アレッサンドロ・マニャスコ(1667~1749)
(米)ベンジャミン・ウェスト(1738~1820)
(西)フランシスコ・デ・ゴヤ(1746~1828)

81歳
(独)ルーカス・クラーナハ(1472~1553)
(仏)ジャン=マルク・ナティエ(1685~1766)
(伊)フランチェスコ・グァルディ(1712~1793)
(米)メアリ・カサット(1845~1926)
(諾)エドヴァルド・ムンク(1863~1944)
(仏)ジョルジュ・ブラック(1882~1963)
(仏)マルセル・デュシャン(1887~1968)

80歳
(伊)ジョヴァンニ・ディ・パオロ・グラツィア(1403頃~1483)
(フランドル)ドイット・テニールス(子)(1610~1690)
(仏)ジャン・シャルダン(1699~1779)
(仏)ジャン=バティスト・グルーズ(1725~1805)
(仏)ジャン=レオン・ジェローム(1824~1904)
(仏)ウィリアム・アドルフ・ブーグロー(1825~1905)
(仏)ピエール・ボナール(1867~1947)

現代の平均寿命(71.4歳)以上となると98人(32.8%)もいるのだから、「画家は長寿で、作家は短命」というのは、少なくとも「画家」に関しては本当みたいだ。

ただ、リストのほとんどの画家は、それほど医療が発達していない18世紀までに生まれているので、平均寿命が63.83歳というのは、長生きどころか、途轍もなく長生きかもしれない。

とは言え、僕の拙いアンテナに引っ掛かるほど、299人の画家たちは、みな時代を生き抜いて後世に名を残しているのだから、平均寿命が高い傾向のリストになっているのは当たり前の結果かもしれないとも思う。

ただ、医学が発達した20世紀以降にヒトの寿命は飛躍的に伸びていたり、19世紀だと50歳くらいとか、(ヨーロッパに限れば)戦争や飢饉の多かった中世は30歳くらいの寿命だったのではないかとも云われていて、やはり700年間という壮大な美術史を彩る画家たちの平均寿命をざっくりと計算しただけでは、どれくらい長生きなのかイメージが湧かないから、時代別に平均寿命を計算してみた。

つづく

高柳茂樹
一般社団法人日本美術アカデミー
プランニングディレクター

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