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【コラム】美術の皮膚(39)「花の都フィレンツェの花の画家~華やかで激しい革命~」

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ルネサンス期の作品を中心として2500点以上の美術品を所蔵し、フィレンツェのみならずイタリアが世界に誇る「ウフィーツィ美術館」は、メディチ家のオフィス(ウフィーツィ)だった建物だ。

ここに“ルネサンスの至宝”と呼ばれる『ヴィーナスの誕生サンドロ・ボティチェリ(ウフィーツィ美術館蔵/1485年頃)が飾られている。

ヴィーナスの誕生

きっと誰もが一度は観たことのあるこの作品には、ギリシア・ローマ神話の中で、海の泡から誕生したとされる(愛と美の女神)ヴィーナスが、貝の船に乗り岸辺に流れ着いた姿が描かれている。画面左上では愛の化身(西風の神)ゼフィロスが、妻の(花の女神)フローラと共に愛の象徴バラの花を撒いている。

地上には花柄のドレスを来た(季節の女神)ホーラが、天上から地上に降りたことを意味する赤いマントを広げてヴィーナスにかけようとしてる。

メディチ家の結婚を祝して描かれた華やかな作品だけれど、実は西洋絵画における“とんでもない”革命を起こしている。よく考えればキリスト教至上の時代に、異教である神話の神々を描くことなどあり得ない上に、禁欲的であることを強いられていたのだから絶対に許されない“裸婦像”だ。

ボッティチェリは、西洋絵画史上初めて古代神話の神々を描いた画家であり、この作品でルネサンスの夜明けを告げたのだから、僕はなんとか“三大巨匠”に紛れ込ませたい。でも、もう満席だからせめて“ルネサンスの至宝”まで描いたボッティチェリが3つの椅子に座り損ねた理由を調べたら、どうやら19世紀に入るまで300年もの間『ヴィーナスの誕生』と共にボッティチェリの名前は、歴史の闇に消えていたらしい。

だとしたら、高さ172.5cm、幅278.5㎝の大作『ヴィーナスの誕生』が隠れるくらいだから、歴史の闇は相当深い。ただ、そこにほんの少しだけ明かりを灯すと、ボッティチェリは『ヴィーナスの誕生』を描くべくして描き、歴史の闇に消えるべくして消え、そして300年後に蘇るべくして蘇ったのだと思えてくる。

1445年頃、フィレンツェの中心を流れるアルノ川沿いのオニサンティ教会の近くで革職人の息子として生まれたボッティチェリは、教育熱心な父親の勧めで(すぐに家業を継がずに)学校に通い、聖書や神話の世界に触れることになる。

13歳の時には金細工の工房で働き始める。今でもアルノ川にかかるヴェッキオ橋の上には、たくさんの貴金属店が立ち並んでいて、金細工はフィレンツェの伝統工芸であることが解るけれど、ボッティチェリの装飾的で華やかな画風には、金細工職人時代の感覚が活かされているのだと思う。

聖母子

15歳の時には画家を目指して、(伊)フィリッポ・リッピ(1457頃~1504)に弟子入りする。『聖母子』フィリッポ・リッピ(ウフィツィ美術館蔵/1467年頃)に代表されるように当時リッピは、聖母マリアを描いたら右に出る者はいないと称された人気画家だった。

聖母子と少年聖ヨハネ(薔薇園の聖母)

修業時代のボッティチェリが描いた『聖母子と少年聖ヨハネ(薔薇園の聖母)』ボッティチェッリ(ルーブル美術館蔵/1467年頃)でも、繊細な線描や装飾的な画面にリッピの影響が見られる。

1467年ボッティチェッリ21歳の時に、師匠のリッピが壁画制作の大仕事のためにフィレンツェを離れると、兄弟子であったヴェロッキオの工房で働き始め、終生ライバル関係となる7歳年下の少年と出会うことになる。

つづく

高柳茂樹
一般社団法人日本美術アカデミー
プランニングディレクター
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