中世(476~1453年)生まれの画家(64人)の平均寿命は、60.53歳だった。その中でもで80歳以上のご長寿画家は下記の3人(生年順)。現代の平均寿命(71.4歳)より生きた画家を加えると11人いる。
80歳
(伊)ジョヴァンニ・ディ・パオロ・グラツィア(1403頃~1483)
15世紀シエナ派を代表する画家で、細密画であるのに人体をデフォルメしたり、少しグロテスクで幻想的な表現に特徴がある。没後に名声は衰退したけれど20世紀に入ってから再評価された。
86歳
(伊)ジョヴァンニ・ベリーニ(1430頃~1516)
15世紀ヴェネツィア派最大の画家で、同派の始祖である父ヤコポの跡を継いで、鮮やかな色彩と柔らかい表現を確立した。
兄も画家(ジェンティーレ)で、北イタリアを代表する画家であるパドヴァ派のアンドレア・マンティーニャはお姉さんの夫という画家一族で、兄と共に設立した当時最大規模の工房から、盛期ルネサンスのヴェネツィアで活躍したジョルジョーネやティツィアーノを輩出して、本人も晩年まで精力的に創作を続けた。
85歳
(伊)ヴィンチェンツォ・フォッパ(1430頃~1515)
15世紀ロンバルディア派を代表する画家で、ヴェネツィア派やパドヴァ派の影響を受けながら、優美さと現実性を両立させた独自の様式を確立して、故郷のロンバルディア地方に新しい芸術をもたらした。
暗黒の時代というのは言い過ぎにしても、「乳幼児の高い死亡率を除いて20歳まで生きた人々の平均寿命は男性で47歳、女性で44歳だった」中世で、精力的に創作を続けた巨匠たちだ。
美術とは関係ないけれど、中世の平均寿命(男:47歳/女性:44歳)と、2015年にWHOが発表した平均寿命(男:69.1歳/女:73.8歳)の男女差が逆転していたことがとても気になる。
いつから女性の方が長生きになったんだろう?と調べてみると、どうやら19世紀中頃から女性の方が長生きの傾向がみられるらしい。もう30年くらい前に、卒業論文で「男女雇用機会均等法と男女平等」について書いた時に資料を調べていて、勝手な想像で「きっと近い将来に“石油と男の時代”は終わって“水と女性の時代”がやって来るかも」と思っていたけれど、もうその頃にはとっくに “女性の時代”は来ていたようだ。
ちなみに、現在でも男性の方が長寿な国が世界にたった一つあるらしい。
トンガ王国(男:74歳/女:70歳)
その理由もとても気になるけれど、もうそれは「美術の皮膚」にさえかすりもしないだろうから、棚に上げておく。
(つづく)