19世紀以前に、最も後世の画家たちに影響を与えた画家は誰なのか?もちろん、画家たちに直接インタビューなどできないし、僕の審美眼では判る訳もないから、コツコツと資料をあたるしかないのだけれど、影響を「与えた」「与えられた」という表記を組み合わせたその結果は…
やはり、(伊)レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)であった。世界でもっとも有名な絵画である『モナ・リザ』(ルーブル美術館蔵/1503-1519頃)を描き、万能の天才と謳われたレオナルド・ダ・ヴィンチは、「空気遠近法」や「スフマート手法」を確立したのだから、以後の画家たちは、むしろ影響を受けずにはいられないだろう。
正確な描写のために、人体の構造を知りたいあまり、見つかれば宗教裁判で死罪にもなりかねないリスクを負って、夜な夜な死体を解剖しては脳の解剖図を精査としたとさえ云われているほどの創作意欲も、他に類を見ないと思う。
1位(12人)レオナルド・ダ・ヴィンチに影響を受けた画家たち
盛期ルネサンス- (伊)ロレンツォ・ディ・クレディ(1459頃~1537)
- (伊)ラファエロ・サンティ(1483~1520)
- (伊)ピエロ・デ・コジモ(1462~1521)
- (伊)ブラマンティーノ(1465頃~1530)
- (伊)フラ・バルトロメオ(1472~1517)
- (伊)ソドマ(1477~1549)
- (伊)ルイーニ・ベルナルディオ(1481頃~1532)
- (伊)アンドレア・デル・サルト(1486~1531)
- (伊)アントニオ・アレッグリ・ダ・コレッジオ(1489頃~1534)
- (フランドル)マセイス・クエイティン(1456頃~1530)
- (独)ホルバイン・ハンズ(子)(1497頃~1543)
- (伊)ヤコボ・ダ・ポントルモ(1494~1556頃)
上記の計12人がレオナルド・ダ・ヴィンチに影響を受けた。画家たちに直接インタビューができたら、もっと多いかもしれないし、間接的に与えた影響も考慮すれば、ねずみ算式に増えていって…詳しい話は専門的な解説にお任せして、僕は美術の皮膚を撫でるように、表面的な「数字遊び」を続けようと思う。
続いて、10人の画家たちに影響を与えた、(伊)ラファエロ・サンティ(1483~1520)が続く。ルネサンス三大巨匠の中で最年少の彼は、先輩たちから多くを学び、後世の研究者たちによって「ルネサンスの集大成を描いた」とまで云われているし、何といっても芸術の黄金期であるルネサンス期の巨匠なのだから、いくら38歳の若さで夭折したからといっても、その影響力は絶大だったようだ。
19世紀中期のイギリスでは、ラファエロを規範とした官制アカデミーに対抗して、華やかなルネサンス芸術(の象徴ラファエロ)を否定し、ラファエロが登場する前のように、自然をありのまま素朴に描こうという「ラファエル前派」という芸術運動が興った。しかし、むしろ逆説的にルネサンスを代表する画家であるという事の証でもある。
2位(10人)ラファエロ・サンティに影響を受けた画家たち
盛期ルネサンス- (伊)ライモンディ・マルカントニオ(1475頃~1453頃)
- (伊)ソドマ(1477~1549)
- (伊)ルイーニ・ベルナルディーノ(1481頃~1532)
- (伊)セバスティアーノ・デル・ピオンボ(1485頃~1547)
- (伊)アンドレア・デル・サルト(1486~1531)
- (伊)パルミジャニーノ(1503~1540)
- (伊)レーニ・グイード(1575~1642)
- (伊)グェルチーノ(1591~1666)
- (仏)ドミニク・アングル(1780~1867)
アカデミック美術(新古典主義/ロマン主義)
- (仏)ウィリアム・ブーグロー(1825~1905)
たくさんの魅力的な聖母子像を描き「聖母子の画家」とまで呼ばれるラファエロの代表作『小椅子の聖母』(ピッティ美術館/1513-1514)を観た印象派の(仏)オーギュスト・ルノワール(1841~1919)は、それまで(人物を美しく描けていないことを根拠に)古典的な絵画を古臭いとバカにしていたけれど、その美しさに衝撃を受けて、いつも懐にその写真を忍ばせていたと云う。でも、それは「影響を受けた画家」にカウントしないことにする。
(つづく)